ペース走はマラソントレーニングの1つとして最もメジャーな練習方法であり、フルマラソンやハーフマラソンで走る上でリズムやタイムを体に覚えさせるのに重要なトレーニングです。今回はペース走で得られる効果やより効果を上げる設定タイムや距離の決め方、合わせて行いたいトレーニング方法などについて解説します。
ペース走とは
一定の距離を一定のペースで走る王道トレーニング
ペース走はその名の通り一定の距離または時間を一定のペースで走るトレーニングです。
ペースは目的によって、マラソン本番を想定したレースペース、ある程度息が弾むが楽に走れるイージーペース、息が切れる限界のペースである閾値走など様々です。
単純なトレーニングでありながらもランニングの基礎能力を上げる練習としては効果的で、部活生から市民ランナー、実業団選手まで必ず取り入れているトレーニングの1つです。
ジョグとの違い
ペース走とジョグの違いとはなんでしょうか。まず、ランニングとジョグの違いとして運動強度の観点から考えると、ランニングの運動強度は息が弾む〜息切れする程度、一方ジョグは喋りながら走れる程度とされています。
ですので、ジョグのペースは人それぞれであり、キロ7分のゆったりとしたペースをジョグと呼ぶランナーもいれば、キロ5分のペースをジョグと呼ぶランナーもいます。
マラソンの元世界記録保持者であるケニアのキプチョゲ選手は普段のキロ4分ペースで走る練習を行っていますが、これも彼にとってはジョグと呼んでいるので多くの市民ランナーにとっては驚きです。
さて、ペース走とジョグの違いですが、前述の通り、ジョグも一定のペースで走った場合にはある意味ペース走ということになります。単純にトレーニングとしてある程度強度を持たせたペースで走ることをペース走と呼び、そうでない比較的楽なペースで走ることをジョグと呼ぶ人もいるため、その捉え方は人それぞれです。
ペース走の効果
ペース感覚を身につけられる
マラソン初心者でも上級者でもありがちなのが、前半に自分の実力以上のペースで走ってしまい、後半で失速するというパターンです。マラソン大会では周りのペースに流されてしまうということもあり自分のペースというものを見落としがちです。
特に初心者は長時間のランニングで自分がこれくらいのペースで走ったらこれくらいの疲労度を感じる、ということがわからないためやってしまいがちです。
正しいペース感覚を掴むということはとても大切で、自分の感覚でこれはだいたいキロ○分だなと刻むことができるとスピードを調整するのに余計な力を使うこともなくなり、フォームの安定にもつながります。
一定のペースで走り続けるペース走はこのペース感覚を身につけるのに、大変効果的なトレーニングといえます。
心肺機能(LT値)の向上
マラソンを完走に導く、記録を伸ばすのに必要な条件の1つとしてあげられる要素が、同じペースで楽に走り続けられる距離を伸ばすということです。
ランニングをしているとある一定のペースまでは楽に感じてペースを上げる余裕があるのに、そのペースを超えた運動強度になるとペースを維持することも距離を伸ばすこともできなくなります。これは血中の乳酸濃度が急激に高まり、乳酸が溜め込まれると疲労を感じやすくなってしまうためです。
この乳酸が発生するポイントをLT値といい、LT値を向上させていくことでより速いペースで、より長い距離を走れるようになります。
ペース走は設定ペース次第ではこのLT値の向上に大きな効果が期待できます。具体的な設定ペースは後述のダニエルズ式にしたがったペース設定で説明します。
筋持久力の向上
マラソンでは着地と蹴り出しの衝撃が何千回、何万回と繰り返し行われるため、それに耐えうる筋持久力、いわゆる脚持ちが必要になってきます。
後述するEペース走やLSDといった負荷をかけすぎずに走り込むことで、この筋持久力を徐々につけていくことができます。
効果的なペースと距離の設定方法
GPSウォッチでペースを確認しながら走る
一定のペースで走るといっても、初心者ランナーにとってはペース感覚というものがわかりにくいものです。また、疲労が溜まるにつれて自然とペースも落ちてしまいがちです。
正確なペース感覚を掴むためにも、最初のうちはなるべく平坦な周回コースで、GPSウォッチを使用して常にペースを確認しながら走りましょう。
ランニング用GPSウォッチは1kmごとのラップタイムを自動で計測するよう設定でき、走っているその時点でのペースもリアルタイムで表示できるのでペースの確認が簡単です。また、GPSウォッチによっては、信号待ちでストップした際にオートポーズしてくれる設定もあるので、ストップ&ゴーの多いルートでもボタン操作の手間がかかりません。