距離とタイム設定が重要!ペース走の効果的なトレーニング方法

更新日:2024/02/25

ペース走はマラソントレーニングの1つとして最もメジャーな練習方法であり、フルマラソンやハーフマラソンで走る上でリズムやタイムを体に覚えさせるのに重要なトレーニングです。今回はペース走で得られる効果やより効果を上げる設定タイムや距離の決め方、合わせて行いたいトレーニング方法などについて解説します。

ペース走とは

一定の距離を一定のペースで走る王道トレーニング


ペース走はその名の通り一定の距離または時間を一定のペースで走るトレーニングです。
ペースは目的によって、マラソン本番を想定したレースペース、ある程度息が弾むが楽に走れるイージーペース、息が切れる限界のペースである閾値走など様々です。
単純なトレーニングでありながらもランニングの基礎能力を上げる練習としては効果的で、部活生から市民ランナー、実業団選手まで必ず取り入れているトレーニングの1つです。

ジョグとの違い


ペース走とジョグの違いとはなんでしょうか。まず、ランニングとジョグの違いとして運動強度の観点から考えると、ランニングの運動強度は息が弾む〜息切れする程度、一方ジョグは喋りながら走れる程度とされています。
ですので、ジョグのペースは人それぞれであり、キロ7分のゆったりとしたペースをジョグと呼ぶランナーもいれば、キロ5分のペースをジョグと呼ぶランナーもいます。
マラソンの元世界記録保持者であるケニアのキプチョゲ選手は普段のキロ4分ペースで走る練習を行っていますが、これも彼にとってはジョグと呼んでいるので多くの市民ランナーにとっては驚きです。
さて、ペース走とジョグの違いですが、前述の通り、ジョグも一定のペースで走った場合にはある意味ペース走ということになります。単純にトレーニングとしてある程度強度を持たせたペースで走ることをペース走と呼び、そうでない比較的楽なペースで走ることをジョグと呼ぶ人もいるため、その捉え方は人それぞれです。

ペース走の効果

ペース感覚を身につけられる

マラソン初心者でも上級者でもありがちなのが、前半に自分の実力以上のペースで走ってしまい、後半で失速するというパターンです。マラソン大会では周りのペースに流されてしまうということもあり自分のペースというものを見落としがちです。
特に初心者は長時間のランニングで自分がこれくらいのペースで走ったらこれくらいの疲労度を感じる、ということがわからないためやってしまいがちです。
正しいペース感覚を掴むということはとても大切で、自分の感覚でこれはだいたいキロ○分だなと刻むことができるとスピードを調整するのに余計な力を使うこともなくなり、フォームの安定にもつながります。
一定のペースで走り続けるペース走はこのペース感覚を身につけるのに、大変効果的なトレーニングといえます。

心肺機能(LT値)の向上


マラソンを完走に導く、記録を伸ばすのに必要な条件の1つとしてあげられる要素が、同じペースで楽に走り続けられる距離を伸ばすということです。
ランニングをしているとある一定のペースまでは楽に感じてペースを上げる余裕があるのに、そのペースを超えた運動強度になるとペースを維持することも距離を伸ばすこともできなくなります。これは血中の乳酸濃度が急激に高まり、乳酸が溜め込まれると疲労を感じやすくなってしまうためです。
この乳酸が発生するポイントをLT値といい、LT値を向上させていくことでより速いペースで、より長い距離を走れるようになります。
ペース走は設定ペース次第ではこのLT値の向上に大きな効果が期待できます。具体的な設定ペースは後述のダニエルズ式にしたがったペース設定で説明します。

筋持久力の向上

マラソンでは着地と蹴り出しの衝撃が何千回、何万回と繰り返し行われるため、それに耐えうる筋持久力、いわゆる脚持ちが必要になってきます。
後述するEペース走やLSDといった負荷をかけすぎずに走り込むことで、この筋持久力を徐々につけていくことができます。

効果的なペースと距離の設定方法

GPSウォッチでペースを確認しながら走る


一定のペースで走るといっても、初心者ランナーにとってはペース感覚というものがわかりにくいものです。また、疲労が溜まるにつれて自然とペースも落ちてしまいがちです。
正確なペース感覚を掴むためにも、最初のうちはなるべく平坦な周回コースで、GPSウォッチを使用して常にペースを確認しながら走りましょう。
ランニング用GPSウォッチは1kmごとのラップタイムを自動で計測するよう設定でき、走っているその時点でのペースもリアルタイムで表示できるのでペースの確認が簡単です。また、GPSウォッチによっては、信号待ちでストップした際にオートポーズしてくれる設定もあるので、ストップ&ゴーの多いルートでもボタン操作の手間がかかりません。

GARMIN(ガーミン) ForeAthlete 745

GARMIN(ガーミン) ForeAthlete 745

GARMIN(ガーミン) ForeAthlete 255S

GARMIN(ガーミン) ForeAthlete 255S

ペースを維持しながら少しずつ距離を伸ばす

GPSウォッチを使って自分の目標とするペースがどの程度の速度か理解できたら、ペースを維持しながら徐々に距離を伸ばしていきます。
ランニング初心者はまずは息切れしない程度のペースでゆったりと、ただしペースはキープしたまま、20〜30分かけて3km程度走るようにしてください。慣れてきたらペースを少しずつあげて、長い距離(まずは5km)を走れるようチャレンジしてみましょう。
マラソンの記録をあげたい中上級者は次に説明するダニエルズ式に合わせたペースをトレーニングに取り入れることで、効率的にトレーニング効果を得ることができます。

ダニエルズ式に合わせたペースで走る

ダニエルズ式トレーニングはアメリカの著名なランニング指導者であるジャック・ダニエルズ氏が提唱しているランニング理論です。
この理論ではランニングをEペース、Mペース、Tペース、Iペース、Rペースの5つの強度に分類し、各強度で得られるトレーニング効果を説明しています。
ダニエルズ式に合わせた自分のペースを知るにはこちらの計算機を使ってみてください。
例えば、フルマラソンのタイムが3時間13分の筆者の場合、Eペースは5:12〜5:44/km、Mペースは4:36/km、Tペースは4:20/kmということになります。


ペース走で使えるペースはこのうちEペース、Mペース、Tペースとなりますのでそれぞれのペースと効果について説明します。

E(Easy)ペース走

Eペースは最も基本的なペースでイージー、つまり楽に走れるペースということです。運動強度としては最大心拍数の60〜70%となります。
Eペース走の走行時間は1回あたり最低30分、最高で150分を推奨されています。怪我を避けるため、トレーニング1回あたりの走行距離は週間距離の30%程度に留めたいところです。例えば週に30km走るランナーであれば9km、50km走るランナーであれば15kmといったことです。
Eペース走の効果は基礎的な心肺機能の向上、地足の強化による怪我の防止、毛細血管の発達による酸素の素早い運搬などの効果が見込めます。
基本的に普段のトレーニングはこのEペース走を中心に構成し、その他のMペースやTペース、インターバル走などをポイント練習として週に1、2回挟むとより効果が発揮されます。

M(Marathon)ペース走

Mペースはフルマラソンのレースペースで、例えばフルマラソンを3時間で走る人であれば4:15/kmというペースになります。運動強度としては最大心拍の75〜84%となります。
Mペース走の効果は本番のレースペースに慣れること、そのペースで走ることによって自身をつけることというメンタル的な点です。トレーニング効果としてはEペース走とあまり変わらないとされています。
実際マラソン本番では、メンタルコントロールが非常に重要で、心の持ちようで大きくタイムが変わることもあります。自分はこの距離をこの時間で走った実績があるということを思い起こすことができれば、大きな自身に繋がることでしょう。

T(Threshold)ペース走

Tペースは閾値走、テンポ走などとも呼ばれ、マラソンのレースペースよりも速いが、30分程度なら継続して走ることのできるペースです。おおよその目安としてはマラソンのレースペースより20秒/kmひいたくらいのペースで、運動強度としては最大心拍の88〜92%となります。
Tペース走ではこのペースで20〜30分間走りますが、ペースをあげず、落とさず同じ速度で走ることに特に意識してください。このペースでは疲労の原因となる乳酸の発生するポイント(LT値)を向上させるのに非常に有効なトレーニングですが、ペースが速すぎても、遅すぎても別のトレーニング効果が現れてしまい正しい効果を得ることができなくなってしまうのでペースの維持が非常に重要なのです。
マラソンの後半30kmあたりで失速する30kmの壁というものがありますが、体がLT値に達していて糖の消費量が一気に増えることなどが原因の1つともされています。
マラソン後半に失速しがちなランナーは、ぜひこのTペース走をトレーニングに取り入れることをおすすめします。

ペース走と合わせて行いたいトレーニング


ペース走の効果的なトレーニング方法について解説してきましたが、ペース走と一緒に組み合わせることでより効果を得ることをできるトレーニング方法があります。以下ではその一例を解説します。

ビルドアップ走

ビルドアップ走は最初はゆったりとしたペースからはじめ、徐々にペースをあげ、最終的に速いペースで走るというトレーニングです。トレーニングの際には一定の時間や、距離でペースをあげていくように設定しておきます。
ビルドアップ走では疲労のある状態でペースをあげていくため、スタミナとスピード持久力の強化が期待できます。また、設定タイムによってはEペース、Mペース、Tペースを組み合わせることができ、それぞれのトレーニング効果を1回の練習で得ることも期待できます。

LSD

LSDはペース走の一種でロングスローディスタンタンス、つまりゆったりとしたペースで長く走ることを意味します。ペースの目安としてはキロ8分程度で、ある程度走っているランナーであればかなり意識的にペースを落とす必要があります。
LSDの効果としてはゆっくり長く走ることによって脂肪燃焼を促進する、遅筋を発達させるといった効果が期待できます。
極度にペースを落として走ることは、ランニングフォームを崩すデメリットもあるため、LSDの翌日には速めのペース走を行いフォーム感覚を取り戻すようにしましょう。

ウインドスプリント

ウインドスプリントは短い距離を速く走ること、簡単にいうと100m程度のダッシュです。ウインドスプリントではペース走では使われにく速筋を鍛えることができ、フォームの改善効果が期待できます。
週1回程度でもトレーニング効果を得られるので、ペース走やジョグのあとの刺激として、普段のトレーニングに組み合わせるとよいでしょう。
具体的なトレーニング方法についてはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。

ガチユル走

全力走(ガチ)とジョギング(ユル)を続けて実施するトレーニングです。
比較的短時間の練習でレース後半の糖(グリコーゲン)が少なくなった状態を再現しつつ、脂肪をエネルギーとして使えるようになる効果があり、マラソンのレース後半を再現することのできる練習として持久力を高めるのに有効です。
メニューの組み立て方としては、ジョグを行った後に全力走を行い、Eペース走を挟んだ後、最後にペースアップして再度ジョグで締めるような形が基本になります。
アップジョグ(2km)→全力走(1km×2)→Eペース走(7~10km)→ペースアップ(1km)→ダウンジョグ(2km)
で合計12〜15kmとなるのを目処に行ってください。

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